ドラゴン描いて自分の塗り手法を確かめる

2013年4月1日月曜日

イラスト ドラゴン



ドラゴンを初めて描いてみました。 描いた理由は色塗り検証の為です。

去年から徐々にソーシャルゲームに使用するイラストのお仕事を頂いていたのですが、ご相談を頂くときはほぼ『厚塗りで塗ることは可能でしょうか?』でした。

僕は基本的にセル塗りが好きで、セル塗り以外の塗りは避ける事が出来ない時以外やってきませんでした。

その理由として、『完成後の色変更リテイクに柔軟な対応をする事が出来る塗り方の確立が出来ていなかった』からです。

僕はアニメーターのころから『クライアントからのリテイクはあって当然、対応できて当然』という考えを持っていました。
(実際にリテイクに対応できたかというと、そうではない事も多かったのですが・・・)

その為、イラストの依頼も完成後に色の修正リテイクやフォルムリテイクは対応できて当然という考えてやってきました。

フォルムのリテイクなどはラフ等の着色前チェックで指摘を受ける事が出来るので完成後に直すという事はほぼ無いのですが、色変更のリテイクは完成後に起きる可能性があります。

Photoshopはなかなかに優秀なツールなので、色が複雑に混ざり合うような塗り方のイラストでも、色調整の機能を駆使すると大体のリテイクには対応できるのですが、修正した結果今まで気にならなかった部分の色を細かく変更したいという欲求が出る事がありました。

無論、出来る範囲で修正はするのですが、基本色、影色、ハイライトまとめて修正するしか出来ない事が多く、『影色だけ色味を足したい』とか『ハイライトのみ色相を大幅に変更してみたい』という欲求にこたえる事ができませんでした。出来たとしても大幅に時間がかかったりして、それがとても気に入りませんでした。

『どの部分の色でもシンプルな工程で変える事が出来る。』
これが理想です。

これが出来ないとクライアントの要求にこたえられない可能性が出てきます。

『前回のリテイクと余り変わらないのに何で今回は出来ないの?』とか『めんどくさいの?』『技術がないの?』等と思われたくありません。
出来ない理由を説明してもなんか自分の中で言い訳している気がしてきます。

『どんなリテイクでもOKですよ。』ニッコリ
『すぐ出来ますよ。』ニッコリ
こうじゃないといけません。

ところが、去年の僕はそれができる手法をもっていませんでした。
その為、最初は断るしかなかったのですが、断ってばっかりというわけにもいかないので、リテイクにビクビクしながら案件を受けつつ、自分の理想とする塗り方というのを半年間かけて模索していました。
(その期間中に受けた仕事の中でうまく対応する事が出来ずご迷惑をかけたクライアントがいる事も事実です。)

しかし、模索していれば道は開けるもので、今年の初めくらいに自分の理想とするレイヤー構造や塗り方の手法というのを見つける事が出来てきました。

今回のドラゴンはその塗り方の効果を確認するための作品です。
なんでドラゴンかというと・・・僕の作品集の中に無いからです。
ただそれだけの理由です。

さて、前置きが長くなりましたが、要は完成後に色を簡単に細かく調整できるようにするための手法です。
言いかえると『色は後から決める塗り方』です。

たまにですが他の絵描きさんと話をしていると、『絵を描く事は出来るのだけど色を決める事が出来ない、難しい。』という悩みを聞く事があります。

とても良くわかります。
僕も線画によるフォルムを捉える事に一生懸命だったので、色の勉強は二の次、三の次でやってきました。

そういう方は僕の塗り方が参考になるかもしれません。
今度手順を公開しようと思うのでご覧いただけるとありがたいです。

で、実際の例として、僕の手法だと完成した後に次のような色調整が可能になります。


変更箇所は以下の通り
■背景
・遠景の建造物と空の色は変化なし
・前景の岩の基本色を緑系に変更
・岩の奥側の影色のみ紫系に変更
・岩の奥側の影色のみ彩度を高く変更

■ドラゴン
・基本色は変化なし
・影色を緑系に変更


色を混ぜ合わせる塗り方でもかなり自由に後から色を決める事が出来ます。


もっと極端に変えてしてしまえば以下のようにムチャクチャな色変更も可能です。
(当然こんなカオスな色を使うこと無いです)


出来るだろうとは思って手法の構築してはいても、実際に自分の思い通りの結果が出ると嬉しいものです。

勿論、色を後から決めるより最初から一発で決めてしまうにこしたことは無いと思います。
しかし僕のように色に対する理解が低い者は後から試行錯誤出来る手法が必要です。

試行錯誤がやりやすい構造だと実験検証も気軽に出来、結果、色に対する理解というのも進みやすい気がします。
少なくとも今の僕は色の勉強をし、それを試してみるのが楽しいです。

色のリテイク、ドンと来いです。
色変更のバリエーション、ドンと来いです。


ちなみに制作過程の産物として以下のような作品も出来たりします。

■セル塗り


僕の基本はセル塗りです。全てはここから始まります。
(今回、背景の影はセル塗りからスタートしなかったので、完成バージョンの影を二値化して少々加工しました。)

影色を黒くしているので、これだけでもアメコミな雰囲気があります。

でも次のバリエーション(コミックアート風)のように、これと完成バージョンの中間くらいが意外と良い雰囲気を出してます。

■コミックアート風


上のセル塗りバージョンに完成版と同様の色による遠近手法レイヤー等を追加したバリエーションです。
実は一番好み。

最後に、今回の作品を妻に見せたところ『ドラゴンに見えない』との指摘を受けました。

その理由聞いてみると『ドラゴンっぽい顔のシルエットじゃない』ということでした。

確かに顔の向きをカメラに向かうようにしたせいでドラゴンらしい間延びしたシルエットは無くなりました。さらに特徴的な長い首もポーズのせいで詰まってしまっています・・・。

そうか・・・『ドラゴンに見えない』か・・・そうか・・・。








QooQ